商品カタログを組む際には、必ず、原稿からDTPソフトへテキストを流し込んでいくという作業が発生します。
これは、DTPソフトがInDesignであってもIllustratorであっても、他の何であっても同じことです。
原稿は、Excelファイルであったり、あるいはデータベースから書き出されたCSVファイルであったりします。
商品写真などの図版のファイル名が原稿内に一緒に記されている場合もあります。その場合には、そのファイルをページ内へ貼り込んでいくという作業があわせて発生します。
こうした手作業は、分量が多い場合、自動化できないものだろうか、という考えが必ずわきおこってくるのではないでしょうか。
カタログをInDesignである程度自動的に組むためには、「XML組版」という方法が最も有効です。以下、その理由をお示しします。
Excelをそのまま流し込む方法のデメリット
誰しもすぐに思いつくのは、ExcelファイルやCSVファイルをそのままInDesignへ流し込めばよいのではないかということでしょう。
InDesignには標準で、これらの形式のファイルを流し込める機能がそなわっています。
しかしこの機能により流し込むことができるのは、カタログの中の表組み部分だけです。
もちろん、表組みが占める割合がかなり大きなカタログもありますので、その場合にはこの方法でもだいぶ効率化されます。
ですが、商品名やキャッチコピーなどは、通常、表組みの中にはありません。これらはこの方法では自動的に流し込めないことになります。
また、カタログの各商品のデザイン、すなわち小組み(コマ)のデザインによっては、商品コードや価格なども表組みの形になっていない場合も多くあります。そのような場合、この方法では自動的な流し込みはできません。
この問題を解決するのが「XML組版」です。
XML組版のメリット
XML組版によってカタログをある程度自動的に組む場合のメリットはズバリ、
「表組み以外の要素も自動的に流し込める」
という点です。
これによって、手作業に比べて作業効率が上がることはもちろん、ExcelデータやCSVデータの流し込みよりもさらに作業効率を上げることが可能となります。
自動的に流し込まれる部分が増えることによって、手作業によるミス(ヒューマンエラー)の軽減も期待できます。
XMLとは
XMLとは、テキスト形式の一種で、項目にそれぞれタグを付けたものです。
これによってXMLファイルは、
- どのテキストがどの項目なのか
- どのテキストが繰り返し部分(すなわち表組み内)なのか
- 商品Aのデータはここからここまでである。商品Bのデータはここからここまでである。
などの情報をテキスト形式で持っています。
テキストにタグを付けているという点で、HTML(やXHTML)ファイルに似ているのですが、XMLファイル内で使用するタグの名前や構成は、案件ごとに、対象とする文書の構造にあわせて、自由に決めることができるのが特徴です。
※実際、XMLで使用できるタグをHTMLに似せてウェブ用に限定したものがXHTMLという形式なのです。
InDesignのXML流し込み機能
InDesignは、XMLを流し込む機能も標準で装備しています。
その際、どの要素をどの書式でどの位置に組むかについて、あらかじめInDesign文書上で形を作っておくことができます。
ある項目は表として組ませ、ある項目は表の外のテキストとして組ませるよう指定することが可能です。
このInDesign上で作った形(テンプレート)を保管しておき、そこへXMLファイルを流し込めば、商品ごとに、各項目が正しい書式や位置で組まれたカタログの小組み(コマ)が、そのつどできあがるというしくみです。
XMLファイルはどうやって作るかというと、Excelやデータベース等からデータを抽出してXMLファイルを作成するロジックを記述したプログラムを作成しておき、それを都度かけてXMLファイルを生成させます。
これがInDesign上でのXML組版です。
XML流し込みをもっと自動化
InDesignの標準のXML流し込み機能だけでも、かなりの程度、自動的にカタログ原稿の流し込みが可能になりますが、それでも残ってしまう手作業のうち、繰り返し作業がかなりあるなら、その部分をさらに自動化させるスクリプトまたはプラグインを作成することもできます。
たとえば
- 原稿内で指定されたファイル名の図版を貼り込んだり、
- テキストのあふれを自動的に長体をかけたりして適切に処理したり、
- 原稿内にデザインパターン指示があれば、それを読み取って、適切なテンプレートを選択して流し込んだり、
といったことをはじめとして、繰り返し作業であればどんなことでも、自動処理が可能となります。
ウェブとの比較
ちょっと技術的な余談になりますが、ウェブのECサイトなどにおいてカタログ表示を行う場合には、データベースからSQL文やLINQ to SQL等によってデータを抽出し、それをPHPやJavaScript等のプログラミング言語で記述したロジックを用いてXHTMLやHTMLへ変換してブラウザに表示させるという方法が採られます。
これと比較してInDesignの場合、SQLを解釈する機能がそなわっていませんので、そのかわりの中間形式として、プログラムでデータソース(Excelファイルやデータベースなど)からXMLファイルを生成し、このXMLをInDesignのテンプレートへ流し込んで自動組版させるという考え方です。
将来、InDesign内でSQLを解釈・実行できる機能やプラグインなどが登場すれば、XMLを用いる必要はもしかするとなくなり、カタログ組版の自動化のロジックをすべてInDesignのスクリプトかプラグインで記述できるようになる可能性があると思って期待しています。
カタログ組版にXML組版が効く理由まとめ
まとめますと、繰り返しになりますが、InDesignのカタログ組版にXML組版が効く理由はズバリ、
- 表組みを自動的に流し込めるだけでなく、それ以外の要素も自動的に流し込むことができるうえ、スクリプト等でさらなる自動化も可能なので、効率UP・品質UPにつながる
ということです。
このような大きなメリットを持つ「XML組版」の特性をぜひ活かし、カタログDTPに役立ててみてください。