DTP作業をしていると、どのような案件であっても必ず、繰り返し作業が発生します。
これは、InDesign・Illustrator・FrameMakerなど、使用するDTPアプリケーションが何であれ発生します。
たとえば、
- Excel原稿やデータベースからカタログへテキストや図版を流し込んでいく
- 項目ごとに決まった場所に色をつけていったり、
- 表セルに収まりきっていない項目に長体をかけて収める
などの、「比較的単純作業でありながら、行わなければならない箇所が比較的多い反復作業」が、この「繰り返し作業」にあたります。
こうした時、多くのDTPオペレーターの頭によぎるのは、
「これを自動的にできるようにならないのか!」
という欲求ではないでしょうか。
そこで以下、DTPを自動化する場合のメリットとともに、自動化を阻む障害として挙げられる大きな項目をいくつか紹介するとともに、この障害を克服できる「半自動組版」というアプローチを紹介します。
自動化には多くのメリットがある
DTPの反復作業を自動化すれば、実際、多くのメリットがあります。
大きなメリットを以下に2つ挙げてみましょう。
1. 効率がアップする
まっ先に思いつくのが、反復作業を手作業で行わなくてよくなることによって、作業の効率がぐんと上がり、完成までの時間が短縮されることです。
- 納期が短縮され、
- 残業をしなくてよくなる、
- または、あいた時間でほかの仕事も行うことができ、
- ひいては収支面も改善される、
などの効果が期待できます。
2. 品質がアップする
DTPの単純作業を自動化すると、効率だけではなく、実は作業品質も向上します。
それは、その単純作業部分において、手作業によるミス(ヒューマンエラー)が起こる可能性をつぶすことができるからです。
- 元データのテキストや画像をカタログへコピーしもれていた、
- 色をつけなければならない項目に色をつけもれていた、
- 長体をかけなければならないセルに長体をかけもれていた、
といった作業もれをなくすことに貢献できます。
このように、品質を最初の作業段階で作りこむことにより、
- 内校が軽減され、そのぶんの人的コストを削減できる
- 赤字のやりとりも軽減されて、お客様からの信頼を向上できる
といった効果が期待できます。
一方、自動化への障害もある
DTPの単純反復作業を自動化すると、このように見逃せないメリットがあるにもかかわらず、多くの現場において、おおぜいのDTPオペレーターの方々が、自動化せず手作業で繰り返し作業を行なっているのが実情です。
その大きな理由としては、以下の3つの障害が挙げられるのではないでしょうか。
1. 自動化のための技術を覚える必要がある
DTP作業を自動化するには、
- アクション
- スクリプト
- プラグイン
などの技術を用いて、求める動きを実現するしくみを作成する必要があります。
しかしDTPオペレーターが皆このような技術を習得しているわけではありません。
2. 自動化を外注すると、かなりの費用が発生しがち
技術がない、時間がない、などの理由で自動化を外注するという選択肢もあります。
しかし、自動化を外注すると、大げさなことになりがちです。
- 自動組版のパッケージを購入し、
- そのパッケージに案件固有の設定を行う費用が発生し、
- 設定機能がない部分についてはカスタマイズ費用が発生し、
となると、かなりの大規模案件でないと投資を回収できないということになりかねません。
これでは、自動化を気軽に導入できないことになってしまいます。
3. 自動化すると、作業がそれによって制約される場合も
とくに、このような自動組版パッケージを導入したケースでは、DTP作業を、そのパッケージのルールに厳格に合わせて行わなければならなくなる場合もあります。
- そのルールをDTPオペレーターに教えるために教育コスト(レクチャー料や、習得にかかる時間)がかかり、
- 手作業部分についてはそのルールに合わせてひと手間増えるためむしろ効率が下がり、
- ちょっとしたイレギュラーパターンにも対応できなくなり、
- お客様からの赤字にも、自動化パッケージのルールから外れるという理由でお断りをしなければならなくなり、
- 複数項目を1段落にまとめて収まりよくする、などの仕上げもうかつにできなくなる、
といったさまざまな副作用が現れてきてしまいますと、効率面のみならず、品質面でも、柔軟性の面でも、むしろ改悪されているというお叱りを受けてしまっても過言ではありません。
これでは、へたをすると、何のために自動化を導入したのかわからないことになってしまいます。
DTP自動化への障害を克服する「半自動組版」
自動化へのこうした障害を克服する方法として、有効なのが「半自動組版」というアプローチです。
これは、何でもかんでも自動化するのではなく、もともと面倒であった反復作業のところだけを選択的に自動化し、それ以外のところは無理に自動化しないというやり方です。
自動化しなかった部分については、従来どおり手作業でDTPを行うことになります。
自動化への障害として挙げた上記3つの項目は、半自動組版を採用することにより、それぞれ以下のように克服されます。
- 自動化のための技術を覚える必要がある →→→ 自分でやるなら、基礎知識はやはりひととおり習得しないといけませんが、そのうえで知るべきクラス・メソッド・プロパティなどの具体的項目は、より限定されます。
- 自動化を外注すると、かなりの費用が発生しがち →→→ 発注する場合も、必要な部分のみに限定した自動化の発注となり、ぐっと費用を抑えることができます。
- 自動化すると、作業がそれによって制約される場合も →→→ 自動化の枠組みによって強いられるルールができることはありませんので、手作業DTP部分において、オペレーターは従来どおり操作すればよく、何ら制約なく、柔軟にイレギュラー対応や仕上げも可能です。
このように、半自動組版を採用すれば、DTP自動化のメリットを享受しつつ、その障害を克服することができます。
半自動組版がDTPの品質・効率・コストに効く理由まとめ
以上をまとめると、半自動組版の品質・効率・コスト面での大きな利点は以下の6つとなります。
- 反復作業を手作業で行わなくてよくなることによって、作業の効率がぐんと上がり、完成までの時間が短縮される。=効率面でのメリット
- なんでもかんでも自動化することを避け、反復作業だけを自動化することによって、自動化の枠組みがDTPオペレーターに新たなルールを強いることを避けることができる。=効率面でのメリット
- 反復作業部分においてヒューマンエラーが起こる可能性をつぶすことができる。=品質面でのメリット
- 作業の効率が上がることによって、ページあたり、時間あたりのコストを削減することができる。=コスト面でのメリット
- 品質が制作段階で作りこまれることによって、内校を軽減し、赤字のやりとりも減らせれば、その分のコストを削減できる。=コスト面でのメリット
- おおげさな全体的自動化ではなく、本当に自動化したい反復作業だけを自動化することによって、自分で自動化する場合でも学習コストがやや抑えられるし、自動化を発注する場合にはかなりコストを抑えることができる。=コスト面でのメリット
このようなさまざまなメリットを持つ「半自動組版」の特性をぜひ活かし、DTPに役立ててみてください。